祐音文芸 MUSEUM
Creator(詩・ガイド・音楽):板井 知明
展示構成・映像制作:祐音文芸
Visual Artwork:Shion Art
🔳 TITLE&CONCEPT
存在と色
―― そのたおやかな溶けあい
私たちが普段暮らしているREALの世界から、ほんとうのFACTの世界を垣間見る試み。FACTの世界は、何物にも縛られない、純粋に自由な世界。
矛盾はそのまま調和であり、時間が逆行し、空間はしばしば捩れながら溶け合う。私たちが現実と呼ぶREAL世界は、無限のFACT世界の一断面にすぎない。
一旦理性を脇に置き、常識を脱いだとき、自由なFACT世界の静かな広がりが見えてくる。
🔳 POEM 01
存在のきしみに耐えかねて
エレガントに
沈黙がむせび泣く
世界が存在していること自体、矛盾と緊張の上に成り立つ。その中で生きる人は、その構造的な痛みを感じる。語っても仕方がないと知りながら、語らざるを得ない。そのとき、言葉を超えた領域が痛みを発している。沈黙の中に音が滲み、沈黙が語り出す。その痛みの受容はあくまで美しく、矛盾を優しく受け止めながら従容として見つめている。
🔳 POEM 02
ばらが開いたとき
ばらはそっと閉じていた
色と香りがからまって
本来の存在とは、開くこと(現れること)と閉じること(消えること)が、ひとつの呼吸の両端ではなかろうか。生まれることと還ることは、同じ瞬間の異なる側面なのかもしれない。日常の時間を離れ、ばらの美しさの深部に入ると、その同一性がふっと見えてくる。何かを演出して起こるのではなく、静かな必然として、世界の呼吸の中で「そっと」起こる。ここでは分離ではなく共鳴が生じる。
色は「現前」――いま、ここにある瞬間。
香りは「余韻」――いまが去ったあとの響き。
現前と余韻、生と消滅、形と無形がからまり合うとき、一枚の透明な曼荼羅が立ち上がる。
🔳 POEM 03
虹の隙間に宇宙が入り込み
ふくらんで 消えて
ぼくらが生まれた
虹の隙間という極微の領域に、宇宙という全体がふっと入り込む。小さなものの中に大いなるものが宿る、ホログラム的な私たちのあり方。宇宙はふくらみ、やがて消える。生成と消滅は、別々の出来事ではなく、一呼吸のうちにある。そこに”ぼくら”が現れる。けれど、ぼくらが宇宙から生まれたのではない。宇宙がぼくらとして現れたのだ。”ぼくら”はすなわち宇宙である。部分と全体が重なり合い、FACT世界のホログラム的な気配が立ち上がる。
🔳 PROFILE
Creator(詩・ガイド・音楽):
板井 知明 ― TOMOAKI ITAI ―
人生をずっと芸術とともに過ごしてきた。音楽や絵画、そして文芸 — そのいずれもが私の呼吸であり、とりわけ言葉の世界に惹かれてきた。そんな折、祐音文芸に出会う。その軽やかでありながら深い響きに導かれてFACT世界を知り、新たな地平が開かれた。今、アートのFACT世界によって自分を、他人を、そして世界そのものを癒す道を探っている。祐音文芸員、祐音研究所研究員。
― 祐音文芸MUSEUM ―
アカデミズムを超越した美の領域、真の人文知を志向する文芸展。
伝統的人文知の流れを汲み、美風派として独自のセラピーミュージアムを展開。
メタ文学とメタアートが融合する詩禅美の世界観を、現代的な感性と交差する新たな文芸表現として提示する。