日本特有の美学

日本に存在しなかった概念

そもそも日本に存在しなかった概念はたくさんあります。

主観と客観の二項対立で語られる認識論は言うまでもなく。

明治時代より前には「哲学」という概念もありませんでした。

西洋哲学に対して「東洋哲学」という概念が生まれたのも明治以降です。

さらに言えば、日本には同時期まで「宗教」という概念すらありませんでした。

それまで哲学の代わりをしていたと見なされた世界観が「宗教」として区別的に定義されたわけです。

もともと日本には存在しなかった哲学も美学も、当初はすべて文学という領域に括られていました。

和欧折衷

当研究所が提供する祐音文芸は、日本知の中でも明治期の文明開化、近代文学に焦点を当てています。

西洋の思想体系を取り込むことで構築された日本の精神性、世界観、創造性。

それは日本と西洋の伝統様式の邂逅によって織りなされた、どちらともつかない和欧折衷の美意識でした。

日本的な表現に欧州の色香を漂わせた気品と瀟洒な趣き。

麗しさ、雅さ、しなやかさ、細やかさ。

近代日本が国の未来を切り拓く上で醸成させた余裕さ、強かさ。

この融合は、明治大正期の旧制高校を中心とした教養主義を生みだし、夏目漱石をはじめとする数多くの天才を輩出しました。

その種は今でも静かに受け継がれています。

真の人文知の普及

折衷思想の象徴としての旧制高校、その流れを汲む東大駒場。

100年以上の歴史を有する三田文學。

私たちは、こうした最高学府と関わってきた経緯と実績を土台とし、東洋知にも西洋知にもとらわれない日本知、メタアカデミズムを志向しています。

メタアカデミズムは、あくまでもアカデミズムとの関わりを経由して辿り着いた領域です。

東洋知と西洋知を折衷あるいは統合した「美学」への道。

現在国が認めている人文知(西洋哲学やリベラルアーツ)から、日本の未来のために国が庇護すべき真の人文知の普及へ。

日本特有の美学、真美の探求のあり方を、ともに学び、考え、伝える力を身につける。

この使命の元に、祐音文芸研究所は存在します。